スーパーGTレースレポート_2008
2008.11.11
2008.11.11
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2008スーパーGT 第9戦 FUJI GT300km RACE (富士スピードウェイ 4.563km) 11月9日(日):決勝 天候=晴れのち雨/ハーフウェット→ドライ→ウェット 気温=8℃~11℃ 路面温度=9℃~11℃ 観衆:9日=4万7100人(主催者発表) |
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●タイヤ安全策は裏目、スリックに交換後はカルロ選手が猛チャージ 引き継いだ山野選手も、ウェット路面にAWDの威力を発揮して3位表彰台に! 前夜に降っていた雨は止んだものの、厚い雲が拡がる空模様で決勝日の朝を迎えた。決勝のスタート前には再び雨粒が落ち始め、チームはインターミディエイト(溝の浅いレインタイヤ)を装着してスタートを迎えることになった。結果的に、この選択は裏目に出てしまい、スタートを担当したカルロ・ヴァン・ダム選手は、スリックタイヤに交換するために予定外のピットインを強いられることになった。これで、ほぼ最後尾まで後退することになったが、タイヤ交換後は猛チャージ。1つ、また1つとポジションアップしていき、クラス12位まで巻き返して前半スティントを終えた。後半を担当する山野選手は、カルロ選手から交替するタイミングでウェットコンディションとなっていたためにレインタイヤで後半スティントを戦うことになったが、彼もまた、スタンドを埋めた大観衆を沸かせる猛追撃を見せる。AWD、そしてウェットタイヤのパフォーマンス、さらに山野選手の巧みなドライビング。総てが見事に”填り合い”、トップ集団より数秒速いペースで周回。予定外のピットインでほぼ最後尾まで後退した序盤には想像もつかなかった3位表彰台(暫定)をゲットしてみせた。 |
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カルロ選手に交替した後、牧野エンジニアにマシンの状況を報告する山野選手。 | フリー走行後に実施される本番さながらのピットシュミレーション。 | ピットウォークではクスコピット前も大盛況。 |
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朝一番のフリー走行は、ウェット宣言が出されていたものの、事実上はドライコンディション。公式予選は全セッションがウェットコンディションだったため、公式スケジュールとしては初めてドライタイヤで走ることになった。先ずは山野選手でスタートし、カルロ選手に交替するパターンだったが、マシンのフィーリングは一変したものになっていた。 前日の雨でコースが洗い流されたためか、あるいは路面温度が約10℃と低く、なかなかタイヤが温まらなかったことが原因か、ともかくグリップ感が物足りない、とドライバー2人はコメント。午後の決勝に向けてセッティングをもう一度、見直すことになった。なお、30分間のフリー走行に続いて、約20分間のサーキットサファリが、今回も実施されたが、チームはその時間も使って、マシンのセッティングを再度確認することになった。 サポートレース、ピットウォークなどプログラムが消化され、いよいよ決勝レースのスタート進行が始まった。スーパーGTレースを統括運営する株式会社GTA坂東正明社長の挨拶が始まった頃から、ポツリ、ポツリと小さな雨粒が落ち始めた。シンメトリカルAWDパッケージを持ったクスコDUNLOPスバルインプレッサにとっては恵みの雨!?。朝一番のフリー走行で、ドライコンディションにマシンセットを合わし切れていなかったから、チーム全員が、そう思った。 しかし、スタートまで、まだ1時間ほども時間があり、その間にどう推移するのか、監督やエンジニア、そしてドライバーも頭を悩ませることになる。そして最終的な判断は、マシンがグリッドに着き、作業が許される最後の瞬間、フォーメーションラップのスタート5分前まで持ち越されることになったが、結局チームは安全性を重視し、インターミディエイトタイヤを選択することになった。 だが、この判断は、結局裏切られることになった。2周のローリングを終えて正式なスタートが切られる頃になって、雨はやんでしまい、反対にコースの前半部分は確実に乾き始めていたのだ。こうなるとインターミディエイトタイヤでは厳しい。事実、カルロ選手はポールポジションからそのままトップをキープしてオープニングラップを終えたが、その後は、スリックタイヤを装着したマシンに、次々にパスされてしまった。 ペースを上げられないどころか、心配していた以上にタイヤの消耗が激しく、4周を終えたところでピットに向かった。もちろん予定外のピットインだがピットではスリックタイヤに素早く交換。最小限度のタイムロスでカルロ選手を送り出した。スタートから間がなく、ほぼ全車が一団となって周回しており、カルロ選手はほぼ最後尾までポジションダウンすることになる。だが、ここから彼の猛チャージが始まった。 ドライセットが、朝のフリー走行に比べて良くなっていたこともあり、好ペースで周回を重ねたカルロ選手は、スリックタイヤに交換するためにライバルが続々と、イレギュラーなピットインを行ったことで見る見るポジションアップ。20周目には16番手まで巻き返すことになった。コース上でライバルをかわすシーンは多くなかったが、タイヤ交換を素早く決断したことと、ピットアウト後に着実に周回したことが、この好結果に繋がった。 その後、天候が下り坂になり、再び雨粒が落ち始めたが、ここでカルロ選手はAWDのアドバンテージを活かしてスリックタイヤのまま着実に走行。12番手まで進出した後、レースも約半分となる29周を走り切り、ルーティンのピットインで山野選手に交替することになった。カルロ選手の渾身のドライビングに触発されたかのように、ピットではスタッフがパーフェクトな仕事ぶり。前後の間隔が少し拡がっていたこともあって、全くポジションを落とすことなく、クラス12番手のままで、山野選手を送り出すことに成功する。 レインタイヤに履き替えて後半のスティントに臨んだ山野選手もまた、見事なドライビングを見せることになる。ピットアウトから数周でポイント圏内に進出すると、その後もハイペースで周回を続ける。レースが進むにつれて雨足が激しくなり上位陣が揃ってペースダウンする中、トップよりも2~3秒速いペースで猛追撃。44周目には5番まで進出し、さらに先を急ぐ。そして47周目には4位、52周目には表彰台圏内の3位にまで進出した。 そしてそのままチェッカーを受ける。トップ2には届かなかったが、ほぼ最後尾まで後退した後、文字通り怒濤の追い上げで3位まで巻き返したことで、納得顔のスタッフが戻ってきたマシンを迎えた。確かに、もしスタートでドライタイヤを選んでいたら、との想いもなくはなかったが、レースに“たら”や“れば”はナンセンス。何よりも、ポジションを上げるたびにスタンドから大きな歓声が湧き上がったことが、この日のレースをハッキリと評価していた。前回の6位入賞に続いての3位表彰台。チームはシーズンに有終の美を飾ることになった。 |
株式会社GT-A坂東社長がお客さんに挨拶する間、スタッフもピット前に整列。 | |
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グリッドウォークで賑わう中、大溝監督はタイヤ選択で最後の決断を迫られる。 | |
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スタート直前までどのタイヤを装着するか決めかね、グリッドには、インターミディエイトとレインも用意された。 | |
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最終的には、このインターミディエイトに履き替えることに。 | |
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国歌が流れる中、スタッフがマシンの横に整列する。 |
●スタッフボイス:大溝敏夫監督 「今日は面白いレースになって、お客さんにも喜んでもらえたと思います。でも、今シーズンを象徴するようなレースでしたね。スタートでインターミディエイトを装着していたのは(上位陣では)少なかったんですが、安全性を考え着実にレースしようと言うことで(インターミディエイトタイヤを)選んだんです。結果的には雨はやんでしまい、厳しい展開を強いられることになってしまいました。でも、ここからがチームの真骨頂。色んなことに全力でチャレンジし、ダメだったらすぐにやり直す。そして絶対最後まで諦めない。これは亡くなった加勢社長のスピリットで、キャロッセにはDNAとして受け継がれているんです。カルロ選手も、ほとんど最後尾から12番手まで追い上げてくれたし、交替した山野選手も渾身のドライビングでポジションアップ。3位でゴールすることが出来ました。前回のオートポリスで久々の入賞し、その時に『次回は、もう少し高いところに上がりたい』と言いましたが、それが現実のものとなりました。やはり、最後まで諦めずに全力を尽くしたことが、この好結果に繋がったんだと思います。1年間、応援ありがとうございました。来シーズンも、全力でチャレンジを続けていきます」 ●ドライバーボイス:山野哲也選手 「スタートでインターミディエイトを選んだのは、最初からリスクを背負うのがキツかったから。ギャンブルに賭けるのではなく、安全にいくためということ。それにカルロも、コースインした時にスリックではめちゃめちゃ滑ったっていうので、グリッドで交換したんです。でも、スタートしたら予想とは逆に、雨が逆に止んでしまった。タイヤも傷んできたから、じゃあスリックに変えようってことになって、前半戦はバタバタしましたね。でも結果としては雨が強くなったのが味方してくれた。ピットインのタイミングも良かったし、後半のスティントで履いたレインタイヤも最後までもってくれて、ペースを落とすことなく最後まで走り切れました。それが3位入賞できた最大の要因です。今年は(セパンで)優勝もできたし、3位入賞も2回できた。これだけ上位入賞ができたのはチームとしても最高の成績だったんじゃないでしょうか。意を決してやってきた甲斐があったなと思います。今日ポディウムに上がることができてよかったです」 ●ドライバーボイス:カルロ・ヴァン・ダム選手 「スタートではインターミディエイトタイヤをチョイスしたんですが、そのあとスリックタイヤに交換するタイミングも、ライバルたちより早めにピットインできて良かったと思います。ボクのスティントでは、序盤いいペースで走れたし、雨が降り出してもスピードをキープしながら走れました。これもクルマのおかげです。山野サンも、見事なドライビングでしたね。3位でフィニッシュできたことは本当にすばらしい結果だと思います。スーパーGT参戦2戦目にして表彰台に立つことができて、本当に嬉しいです。日本のレースで表彰台に上がったのは、今日で20回目(注・全20戦のF3シリーズで表彰台が19回)になりました。スタートから、ずっと雨だったら勝てるチャンスもあったと思いますが、でも、これもレース。チームにとってはポールポジションを獲って3位入賞を果たした、すばらしい週末だったと思います。チャンスを与えてくれたチームにあらためて感謝しています」 |
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|スーパーGT 富士 決勝| |